急転直下で決まった2020年の東京オリンピックのマラソン・競歩の札幌開催案をめぐり、新たな懸念が生じている。
札幌中心部の大通公園で毎夏に開催される風物詩「札幌夏まつり」のビアガーデンが中止に追い込まれる可能性が浮上したからだ。
スタート・ゴールは「大通公園」か
東京都、政府、大会組織委員会、IOC調整委員会の4者は11月1日、東京オリンピックのマラソンと競歩の開催地を札幌に決めた。発端は、東京の夏の猛暑を問題視したIOCによる提案だった。
東京都の小池百合子知事は「IOCの下した決定を妨げることはしない」と述べた上で、「あえて申し上げるならば、合意なき決定」と、不快感を露わにした。
NHKによると、国際陸連は以下の日程案を示しているという。
・2020年8月7日〜9日(大会最終日)
・2020年7月27日〜29日
・2020年7月28日〜30日
北海道新聞は11月1日、大会組織委員会がマラソンの発着点を大通公園(中央区)に絞ったと伝えた。
札幌開催でビアガーデン中止の危機?
ところが、この日程案をめぐって「ある懸念」が持ち上がった。
大通公園で毎年7〜8月にかけて、約200万人が訪れるイベント「さっぽろ夏まつり」が開かれるが、東京五輪の期間と重なるため、イベントの開催が危ぶまれるのではと心配する声が相次いでいるためだ。
「さっぽろ夏まつり」には約1万3000席のビアガーデンが大通公園に登場し、多くのジンギスカンやビールに舌鼓を打つ。札幌の夏の風物詩として親しまれている。
北海道新聞によると、大会組織委員会は資材や機材の置き場の確保として、公園を1~1カ月半使うことを想定しているという。
「ビアガーデン潰さないで」
報道を受けて、Twitterなどでは「ビアガーデンだけ潰さないように頼んます」「どっちが大事って言われたら絶対にビアガーデンなんですよ」と悲痛な声が相次いでいる。
一方で、「うまく設営して、ゴールのとこに大型ビジョン置いて、観客はそれ観ながら応援」など、調整を求める意見もあった。
マラソンの札幌開催案が報じられたことで、札幌市には10月17日以降、電話やメールなどで約200件の意見が寄せられ、うち7割は札幌開催に反対で「札幌は辞退すべきだ」「札幌は泥棒」などがあるという。
Twitterでは「こっちだって迷惑だよ。おかげで大通公園のビアガーデンはおじゃんだ。それを泥棒呼ばわりとは何事であるか。文句はIOCに言ってほしいね」と言う意見も出ている。
ワイドショーで司会者、元選手が札幌批判
札幌開催をめぐっては、テレビのワイドショーで代替開催地となった札幌の景観を批判する例が目立った。
11月1日放送のTBS系「ひるおび!」では、元陸上選手の千葉真子氏が、コースに想定される新川通りについて「なんにも無いんです」「駅からのアクセスが悪くて応援も少ないんじゃないか」と批判した。
読売テレビ系「情報ライブミヤネ屋」では、司会の宮根誠司氏が「(景観に乏しく)実況アナウンサー泣かせですよ」と発言。
さらに同日のフジテレビ系「とくダネ!」司会の小倉智昭氏は「決して映像的には美しいコースではないと思います」と述べた。
この発言について、北海道文化放送の廣岡俊光アナウンサーが1日、Twitterで「本当に悲しい」とつぶやいた。
バルセロナ五輪(1992年)で銀、アトランタ五輪(1996年)で銅メダリストとなった元マラソン選手の有森裕子さんは、札幌が批判されている状況について、以下のように苦言を呈した。
「今回の決定プロセス…東京都民の皆様が何ら悪い訳じゃない、と同じく北海道の皆様が何ら悪い訳じゃないはず。どちらも被害者。互いにdisったり、非難するなんてやめましょう!」
「メディアの皆様も、もう少し心ある建設的な報道、ゲストの方々のコメントをお願いします」